Graphic: Teppei Kaneuji

東京公演

2020/2021 あうるすぽっとタイアップ公演シリーズ

チェルフィッチュ×金氏徹平

作品概要

人間のスケールを脱し、世界を見る目を更新する演劇
人、モノ、時間、空間、言葉が、未知のすがたで現れるーー

演劇という人間のための営みを通して、人間とモノ、それらを取り巻く環境とがフラットな関係で存在する世界を生み出すことはできるだろうか。

東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市。津波被害を防ぐ高台の造成工事は驚異的な速度で風景を人工的に作り変えつつあった。岡田利規がその光景を目撃したことから構想された「人間的尺度」を疑う作品は、彫刻の領域を拡張し続ける美術家・金氏徹平をコラボレーターに迎え『消しゴム山』として実現した。無数にモノの並ぶ空間で俳優はモノと新たな関係を構築し、それを目撃する観客もまた、世界を新たな目で見ることになる。

2019年10月の『消しゴム山』京都初演から1年。劇場からスタートした試みはさまざまな空間へと展開してきた。『消しゴム森』では美術館というモノのための空間に俳優が入り込み、モノとのパフォーマンスはさらなる進化を遂げた。その成果は『消しゴム畑』で俳優の生活空間へと持ち込まれ、日常の風景の見え方を変えた。再び劇場へと回帰した『消しゴム山』はどのような風景を描き出すのか。「消しゴム」シリーズの最新形。

ステ−トメント

消しゴム山、というのは根本的に新しい演劇をつくるということに着手したいと考えたわれわれがつくってみた山ですが、〈根本的に新しい〉ということについてもう少し具体的に、どこを新しくしたいと思っているかというのを補足するならば、人間を中心にすえたナラティヴの中で生きる人間のための・そんな人間にとっての問題とされていることを扱うための、容器としての演劇を、なにかそうではないものへとずらしていくというか拡張していくというか、そういうことがしたいと思ったのです。それは人間にとって、演劇の観客であることのできるフツーに考えたら唯一の存在であるはずの人間にとって、この先必要となってくることだろうとも思ったのです。

岡田利規

何処でも無い場所、何時でも無い時間、誰でも無い人、何でも無いモノ、これらを作り出すことは僕にとっても永遠のテーマですが、演劇という場にその可能性を感じています。それらを立ち上げよう、積み上げようとすることそのものが「消しゴム」シリーズであると言えるかもしれません。 その最初の作品である「消しゴム山」は「森」を巡り、「石」を手に取り、「畑」を耕したことによって、変形して見えるかもしれません。同じ山でも見る場所や季節や天候によって、その存在感、距離感、スケール感が全く違って見えるように。

金氏徹平

作家プロフィール

作・演出

岡田利規

おかだ としき

1973年横浜生まれ、熊本在住。演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰。活動は従来の演劇の概念を覆すとみなされ国内外で注目される。2005年『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞を受賞。同年7月『クーラー』で「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005ー次代を担う振付家の発掘ー」最終選考会に出場。2007年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(新潮社)を発表し、第二回大江健三郎賞受賞。2012年より岸田國士戯曲賞の審査員を務める。2013年初の演劇論集『遡行 変形していくための演劇論』、2014年戯曲集『現在地』(共に河出書房新社)を刊行。2016年よりドイツ有数の公立劇場ミュンヘン・カンマーシュピーレのレパートリー作品演出を4シーズンにわたって務め、2020年『The Vacuum Cleaner』がドイツの演劇祭Theatertreffenの“注目すべき10作品”に選出。2018年8月にタイの小説家、ウティット・へーマムーンの原作を舞台化した『プラータナー:憑依のポートレート』をバンコク、12月にパリ、2019年6〜7月に東京で上演し、2020年2月に第27回読売演劇大賞 選考委員特別賞を受賞。2020年戯曲集『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』(白水社)を刊行し、2021年2月に第72回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞を受賞。
©宇壽山貴久子

セノグラフィー

金氏徹平

かねうじ てっぺい

1978年京都府生まれ、京都市在住。2001年京都市立芸術大学在籍中、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)に交換留学。2003年京都市立芸術大学大学院彫刻専攻修了。現在、同大学彫刻専攻准教授。日常の事物を収集し、コラージュ的手法を用いて作品を制作。彫刻、絵画、映像、写真など表現形態は多岐にわたり、一貫して物質とイメージの関係を顕在化する造形システムの考案を探求。個展「金氏徹平のメルカトル・メンブレン」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、2016)、「四角い液体、メタリックなメモリー」(京都芸術センター、2015)、「Towering Something」(ユーレンス現代美術センター、2013)、「溶け出す都市、空白の森」(横浜美術、2009)など国内外での展覧会のほか、舞台美術や装丁も多数。あうるすぽっとプロデュース「家電のように解り合えない」(2011)、KAATキッズ・プログラム2015おいしいおかしいおしばい「わかったさんのクッキー」(2015-2016)での舞台美術をはじめ、自身の映像作品を舞台化した「TOWER」(2017)では演出を手掛ける。
©川島小鳥

俳優プロフィール

青柳いづみ

あおやぎ いづみ

08年「三月の5日間」ザルツブルグ公演よりチェルフィッチュに参加。07年よりマームとジプシーに参加、以降両劇団を平行し国内外で活動。近年の主な出演作にチェルフィッチュ「部屋に流れる時間の旅」、金氏徹平「TOWER」、藤田貴大演出「みえるわ」(小説家・川上未映子との共作)、「CITY」など。漫画家・今日マチ子との共著「 いづみさん」(筑摩書房)、朗読で参加している詩人・最果タヒの詩のレコード「こちら99等星」(リトルモア)が発売中。
©篠山紀信

安藤真理

あんどう まり

2006年伊丹アイホールにて岡田利規ワークショップ&パフォーマンス「奇妙さ」に参加。以降2008年『フリータイム』、2009年『記憶の部屋について』(金沢21世紀美術館「愛についての100の物語」)、『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』、2011年『家電のように解りあえない』、2016年『部屋に流れる時間の旅』他に出演。

板橋優里

いたばし ゆり

1993年宮城県生まれ。尚美学園大学卒業。ウンゲツィーファ、アナログスイッチ、小田尚稔の演劇などに出演。近年の主な出演作品は、美術手帖×VOLVO ART PROJECT 小田尚稔の演劇『善悪のむこうがわ』、チェルフィッチュ『三月の5日間』リクリエーション。

原田拓哉

はらだ たくや

1981年大阪府生まれ。京都嵯峨芸術短期大学卒業。美術家。グループ展 2007年『Uchu』(gallery Den58)、2008年『one room3』(元立誠小学校)、2013年『What(n)ever』(コーポ北加賀屋)、2015年『DAYDREAM with GRAVITY』(ホテルアンテルーム京都)

矢澤誠

やざわ まこと

1972年福島県生まれ。俳優。
NODA・MAP、宇宙レコード、ニブロール、ミクニヤナイハラプロジェクト、カムカムミニキーナ、安藤洋子プロジェクト、遊園地再生事業団、敦×杏子プロデュースURASUJI、本能中枢劇団、カンパニーデラシネラ、オフブロードウェイミュージカル『リトルショップ・オブ・ホラーズ』などに出演。
チェルフィッチュには2010年『私たちは無傷な別人である』より参加。『地面と床』『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』に出演。

米川幸リオン

よねかわ こうりおん

1993年三重県生まれ。父がイギリス、母が日本、のニッポン人。京都造形芸術大学映画学科俳優コースと映画美学校アクターズコースを卒業。主な出演作品は、チェルフィッチュ『三月の5日間』リクリエーション、小森はるか+瀬尾夏美『二重のまち/交代地のうたを編む』、ミヤギフトシ『感光』、など。また、伯楽-hakuraku-のメンバーとして、岩手県住田町での自主映画の企画〜上映までも行なっている。